子どものこころや行動の問題や育児に悩む親(養育者)に対し、親子の相互交流を深め、その質を高めることによって回復に向かうよう働きかける遊戯療法や行動療法に基づいた心理療法です。PCITは1970年代、米国でSheira Eyberg教授によって考案・開発され、現在も発展を続けています。
PCITが効果を発揮するのは、一言でいうと「言うことを聞かない」「乱暴」「落ち着かない」「ぐずぐすする」などの行動上の問題を有する子どもや、育児困難に悩む養育者です。治療効果に関してはすでに多くのランダム化比較試験が行われており、特に子どもの問題行動への介入についてはアメリカ心理学会の提示するエビデンスに基づく治療のガイドラインにおいて「よく確立されたwell-established」治療として位置付けられています。近年では、注意欠損多動性障害(AD/HD)や自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもの養育をターゲットとした介入や、虐待を受けた子どもとその親との関係改善についても研究され、いずれも良好な結果が得られています。
プログラムは前半の子どもが遊びのリード(主導権)をとるなかで親子の関係を強化する子ども指向相互交流(Child Directed Interaction : CDI)と、後半の親がリードを取りしつけを行う親指向相互交流(Parent Directed Interaction : PDI)の2段階に分かれています。子どもの問題行動が減り、親がCDIとPDIのスキルをマスターして育児に自信が持てたらこの治療は終結します。理論的背景として重要なのは、Bowlbyらによるアタッチメント理論、Skinnerの行動修正理論、Banduraの社会学習理論 (Bandura)のほか、Baumrindのペアレンティング・スタイル等です。
PCITは、日本では2008年に東京女子医科大学附属女性生涯健康センターで導入されて以来、徐々に日本の臨床や研究に浸透してきました。当センターのトレーニングは、創始者であるEyberg教授がCEOを務めるPCIT Internationalのトレーナー・セラピスト認定制度に基づいているため、学ぶだけでなく、ライセンス取得を目的とした研修プログラムを受けることが出来ます。